伊勢擬革紙について

 
擬革紙とは革に擬(なぞら)えた紙のことをいいます。和紙を絞り、皺を付けたり、紋様を施して革のような風合いに仕上げます。
 
 

 

和紙から油紙へ
 

和紙は奈良時代から書写以外にも生活用品として用いられてきました。江戸時代には、桐油を塗った油紙が番傘や合羽に使われています。喫煙の風習も広まり、当初は刻み煙草を革や、布袋、懐紙に入れていましたが、煙草の葉が湿気らないように、防水効果のある合羽の切れ端(油紙)にくるむようになりました。
 

油紙から擬革紙へ
 

油紙で作られた煙草入れは、使い込むほどに革のように柔らかくなります。伊勢の国では、このことに着目した堀木忠次郎(三忠)が1684年(貞亨元)油紙を改良して擬革紙の製造を始めたと伝えられています。その後、池部清兵衛(壺屋)が煙草入れに加工し売り出しました。当時、皮革が貴重であったことから、擬革紙の煙草入れが伊勢参りのみやげ物として大流行しました。
「夕立や いせの稲木の煙草入れ ふるなる光る つよいかみなり」 
江戸の狂歌師大田蜀山人もこの様に詠んだと言われています。
 

煙草入れから壁紙へ
 

明治期には、海外からの助言や技術も導入され、擬革紙の装飾性が高まり製法も進歩しました。ヨーロッパでは、壁紙に擬革紙が用いられるようになり、日本から盛んに輸出されました。海外の博覧会に出品するたび、その高い加工技術が賞賛され、1900年(明治33)のパリ万国博覧会では、三忠と壺屋の擬革紙が金賞を受賞しました。この地域の職人たちは、技術の向上に努め国内外の博覧会で数多くの賞を受賞しました。
 

擬革紙のルネサンス~伊勢擬革紙へ
 
三重県伊勢周辺は擬革紙の一大産地でしたが、刻み煙草が紙巻煙草にかわり皮革や新素材が出回りはじめ、昭和初期には生産されなくなりました。そして、その技術は途絶えてしまいました。擬革紙の製法は口伝であったことから、文章による資料がほとんど残されていません。参宮ブランド「擬革紙」の会は、現物資料をもとに紙を分析し道具を再現して、途絶えた技術を一つ一つ今にたぐりよせ、「伊勢擬革紙」として再興を進めています。

 
 

 
擬革紙の製造工程

 
次の製造工程により、擬革紙を製造します。
 
A 型紙製作
和紙を貼り合わせて型紙を作ります。湿気が少なく、気温が高い時期に柿渋を塗り重ねながら天日干しを行い、丈夫な型紙を作ります。
 
B 着色
染料や顔料を使って着色します。
 
C 万力絞り
着色した紙を型紙にはさみ、万力を使って絞ります。角度や回数により、異なる風合いになります。

D 表面加工
再度の着色や、表面加工を施し、原紙に仕上げます。
 
 

© GIKAKUSHI NO KAI

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伊勢擬革紙について
 
和紙から油紙へ
 
和紙は奈良時代から書写以外にも生活用品として用いられてきました。江戸時代には、桐油を塗った油紙が番傘や合羽に使われています。喫煙の風習も広まり、当初は刻み煙草を革や、布袋、懐紙に入れていましたが、煙草の葉が湿気らないように、防水効果のある合羽の切れ端(油紙)にくるむようになりました。
 
油紙から擬革紙へ
 
油紙で作られた煙草入れは、使い込むほどに革のように柔らかくなります。伊勢の国では、このことに着目した堀木忠次郎(三忠)が1684年(貞亨元)油紙を改良して擬革紙の製造を始めたと伝えられています。その後、池部清兵衛(壺屋)が煙草入れに加工し売り出しました。当時、皮革が貴重であったことから、擬革紙の煙草入れが伊勢参りのみやげ物として大流行しました。
「夕立や いせの稲木の煙草入れ ふるなる光る つよいかみなり」 
江戸の狂歌師大田蜀山人もこの様に詠んだと言われています。
 
煙草入れから壁紙へ
 
明治期には、海外からの助言や技術も導入され、擬革紙の装飾性が高まり製法も進歩しました。ヨーロッパでは、壁紙に擬革紙が用いられるようになり、日本から盛んに輸出されました。海外の博覧会に出品するたび、その高い加工技術が賞賛され、1900年(明治33)のパリ万国博覧会では、三忠と壺屋の擬革紙が金賞を受賞しました。この地域の職人たちは、技術の向上に努め国内外の博覧会で数多くの賞を受賞しました。
 
擬革紙のルネサンス~伊勢擬革紙へ
 
三重県伊勢周辺は擬革紙の一大産地でしたが、刻み煙草が紙巻煙草にかわり皮革や新素材が出回りはじめ、昭和初期には生産されなくなりました。そして、その技術は途絶えてしまいました。擬革紙の製法は口伝であったことから、文章による資料がほとんど残されていません。参宮ブランド「擬革紙」の会は、現物資料をもとに紙を分析し道具を再現して、途絶えた技術を一つ一つ今にたぐりよせ、「伊勢擬革紙」として再興を進めています。
 


 
 擬革紙の製造工程
 
次の製造工程により、擬革紙を製造します。
 
A 型紙製作
和紙を貼り合わせて型紙を作ります。湿気が少なく、気温が高い時期に柿渋を塗り重ねながら天日干しを行い、丈夫な型紙を作ります。
 
B 着色
染料や顔料を使って着色します。
 
C 万力絞り
着色した紙を型紙にはさみ、万力を使って絞ります。角度や回数により、異なる風合いになります。

D 表面加工
再度の着色や、表面加工を施し、原紙に仕上げます。